こんにちは、1期生の杉田です。初めてのコラムで緊張しています!
今回は「企業内キャリアコンサルティングが求められている理由」について、考えてみたいと思います。
「キャリアコンサルティング」と聞くと、就職支援や転職支援を思い浮かべる方も多いと思いますが、私は「企業内」でこそ求められていると考えています。なぜなら、キャリアコンサルティングは企業にとって大きな課題である「人材不足」への処方箋となると考えているからです。
会社員として16年勤務してきた経験も踏まえながら、その理由をお伝えします。
まず企業が「人材不足だ!」となるのはなぜでしょうか?
その理由のひとつは純粋に「人が足りない(採用できない・辞めてしまう)」ということ、もうひとつは見落とされがちですが「社員の生産性が高まらない(もっと高まる余地がある)」ということです。
なぜなら企業の成果は単純化すると、

で表すことができます。
つまり企業が求めている成果に届かない理由が①もしくは②である場合に、「人材不足だ!」となっている、と考えられます。
キャリアコンサルティングはこの①に対しても②に対しても効果を発揮するものであるため、まさに「人材不足」への処方箋となります。
少し具体的に考えてみたいと思います。
まずはどれくらいの企業で「①社員の人数」が足りていないのでしょうか? 帝国データバンクの実施している調査では、2024年4月時点における全業種の従業員の過不足状況について、正社員が「不足」と感じている企業の割合は51.0%であったというデータがあります。
正社員・非正社員の人手不足割合 月次推移

(出典)帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月)」https://www.tdb.co.jp/report/economic/36b_1n7eo81t/
コロナ禍では人手不足感は一旦薄まったものの、その後は増加の一途をたどっており、現在約半数の企業で人手不足を感じているという結果です。
その要因はシンプルに「人材が入ってこない(採用できない)」「人材が出ていってしまう(退職者が多い)」ことに起因します。ここでは「人材が出ていってしまう(退職者が多い)」方に着目します。
中でも「せっかく主戦力となるよう育てたのに、辞めてしまった!」というようなケースでは、「もっと早く気付いていれば、対処できたのに・・・」「社内で異動すれば、転職しなくても希望を叶えられたのに・・・」という声は、どこの職場でも起こりがちですし、私自身も遭遇してきました。その度に「もったいない!」とか「なんで気付いてあげられなかったんだろう・・・」とか、思うわけです。 もしもキャリアコンサルタントが早めに気が付いて転職以外の方法も一緒に考えることができれば、退職を防げる可能性が高まります。
次に「②社員一人ひとりの生産性」についてですが、これは社員の「モチベーション・能力」に大きく影響を受けています。キャリアコンサルタントが面談で個人の良いところを認め、キャリアへの意味付けを手助けすることで、モチベーションUPへと繋がります。(本当は管理職がそこまでできれば良いですが、何もかもを管理職に背負わせるのも無理があるかな、と思います。)
私自身、育児休業明けに仕事がうまくいかなかった時にキャリアコンサルティングに出会い、自分の強み・弱みや仕事で実現したいこと等を言語化できるようになりました。言語化することでモヤモヤから抜け出せると、また頑張れたりするんですよね。
また、当然ながら生産性は社員の「モチベーション・能力」だけに依存しているものではなく、組織の「仕組み・文化」とも密接に関係しています。「仕組み・文化」については簡単に変えられないものですし、変えてしまうことが良いとも一概には言えません。ただ、キャリアコンサルタントが社員との面談を通じて把握した企業の状況に合わせて踏み込んだ提案をすることもあり得ると考えています。 つまりキャリアコンサルティングは、「社員のモチベーションUPに加え、組織の仕組み改善を通じて、生産性向上を実現できる可能性を秘めている!」と言えます。
以上、「企業内キャリアコンサルティングが求められている理由」について、記載しました。
キャリアコンサルティングは社員の退職を防ぎ、モチベーションを高めることで、「人材不足」への処方箋となるものです。人材不足を解消し、社員一人一人が能力を発揮できる組織になっていければ、企業の成果は自ずと高まるはずです。
「キャリアコンサルティングは人生を変える可能性がある、そして組織を変える可能性がある」そんなことを思いながら、これからも学びを深めていきたいと思います。
杉田 薫子(すぎた かおるこ)
総合不動産会社にて営業・商品企画を担当後、人事部にて採用・育成、女性活躍推進プロジェクトの立ち上げを実施。その後、マンション・大学キャンパスビル・学生寮等の事業企画・開発を約11年担当。一級建築士。
第二子の育児休業復職後にキャリアコンサルティングに救われた経験より、国家資格キャリアコンサルタントを取得。現在はマネージャー職を務めながら、キャリアコンサルティングと組織開発について学びを深めている。